少年野球の指導で感じることですが、入部したてや体験入部の段階において、ボールを投げる、捕る、打つの能力が明らかに低下してきていると感じます。
数年前までは、形は出来ていなくても、投げ方や打ち方、またグラブを使ったキャッチがそれなりに出来ていました。それと比較して、最近の子どもは、下半身と上半身の連動がまったくできていない投げ方や、グラブを使ったキャッチがまったくできない、素手でのキャッチもうまくできないというような子どもが非常に増えてきました。
では、なぜ過去はできていたのか。
それは、お父さんとキャッチボールをしたり、友達と野球をして遊んだりと、遊びの中で身についていたからです。これは投げる、打つ、捕るに限ったことではなく、様々な場面でそのような傾向が見られます。
環境などの変化によって、子どもたちから「遊び」が減少していき、その中から様々な大切なことを得る機会を失っているのです。
では、具体的に遊びの中からどんなことが身につくのか。それをみていきましょう。

子どもは遊びが仕事
文部科学省のパンフレットにも、遊びは子どもの心の成長にとっても大切であり、遊びを通して、感覚を働かせ、運動をし、ものをつくり、想像をすると記されています。以下が遊びから得られるメリットになります。
・集中力、工夫する力、創造力、想像力、最後までやり遂げる力などが養われる
・知的好奇心や探求心を育む
・自主性、協調性、共感、役割、責任、他社とのかかわり方が身につく
・自分の気持ちを調整する力、物事に主体的に取り組み、粘り強く頑張る力を育てる
・困難に立ち向かう方法を編み出し、ときには自制したり、我慢したりもしながら、
思いを叶えるスキルを体得する
・運動神経を高める
・体力がつく
このように遊びは、体力、運動能力だけではなく、創造性やそれ以外にもコミュニケーション能力、問題解決や認知スキルなど様々な面を育みます。それが「子どもは遊びが仕事」だといわれる所以なのです。
なぜ遊ぶ子どもを見かけなくなったのか
現代の子どもは、小さい頃から習いごとなどで時間に追われ、遊ぶ時間を確保することが困難になっています。また昔の子どもたちの遊び場だった空き地や裏山などの減少、道路も遊び場でしたが、危険だからと止められる。公園でもボール遊びやバット使用禁止、公園の中なのに、近所の大人が騒がしいとクレームを言いに来るなど、遊びがかなり制限されています。

遊び方を知らない?
私自身の体験を思い出してみると「遊び」は、代々受け継いでいくものでした。私自身は長男だったので、お兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に遊ぶことはもちろん無かったのですが、友達にはもちろん次男や三男、次女や三女がいます。その友達から自然に遊びを教えてもらったり、また友達のお兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に遊んだりして、遊びの種類を増やしていったものです。
ところが最近の子どもは、外で遊ぶ機会が減少しているので、そういった遊び方を教えてもらう機会も減少している。また、家にいればスマホやオンラインゲームで楽しむことができます。オンラインで友達とも繋がることもできます。

親が知っている遊びも減ってきているのではないか?
もうひとつ。最近になって思ったことがあります。
親自身も知っている遊びがかなり減っているのではないかということです。
「パパたちは、子どもの頃こんな遊びをしていたんだよ!」と親から遊びを教えてもらうこともあると思います。しかし、今の親世代のときから、遊ぶ場所の減少や、スーパーファミコンやプレイステーション、ゲームボーイなどのゲーム機も普及しており、遊び自体が変化を始めた世代だったのではないかと推測できるのです。
小学生も遊びが重要
「遊びは未就学児までで、小学生になったら、勉強や習いごとが優先!」という誤った意識の切り替えをしているご家庭も多いのではないのでしょうか。子どもにとって遊びがいかに重要かまずは認識することが必要だと感じます。
あらためて、遊ぶことで得られることを挙げておきましょう。
・運動能力を高める
・問題解決力を高める
・興味や好奇心を高め、知的な発達を促進する
・イメージを広げ、表現力を豊かにする
・同年齢、あるいは異年齢の仲間関係を経験する
・自発性、自主性を養う
・失敗しても投げ出さず、「どうやったら解決できるか」を考える癖がつく
・創造性、社会性、認知能力、情緒的健康、身体的発達、自己決定権を育てる
このように、遊びは子どもの成長に欠かせない要素で、心や体の発達、社会性、情緒面などさまざまな側面を育てるのに役立つのです。遊びが子どもにとっていかに重要かは、世界各国で提唱されており、疑う余地はないでしょう。

まとめ
現代の子どもたちは、塾や習いごとに忙しく、遊ぶ時間を確保することが難しくなっています。また、遊ぶ場所も限られています。そういった事情が重なり、遊びの伝承も薄くなり、遊び方すらわからなくなる子どもが増えているのだと感じます。
まずは、社会で遊ぶ場所や時間、遊びの伝承など、環境を整えてあげること。いろいろな遊びに触れることで、体力の向上、認知能力、非認知能力の発達に繋がるのです。
私自身も少年野球チームで子どもを預かる立場として、そのような環境を少しでも作っていけたらと考えています。